Wurly Premier G

このサンプリングを録音したのは2001年になります。しかし音楽業界で活躍されている国内外の知人は、いまだにこのWurlitzer音源が、最もお気に入りと言います。その魅力の理由は、録音方法が他の音源と異なり、Line入力ではなくWurlitzer内蔵スピーカーをわざわざマイク録りしている事かも知れません。

ビンテージ・キーボードであるWurlitzer 200Aは、完全なアナログの機構で成り立っています。SNもプアーですし、木製ハンマーが弦を叩き、元の場所に落ちる機構は、実に様々なノイズを発します。デジタルシンセしか知らないデジタル世代は驚くかもしれません。しかしそのノイズこそ、甘い魅惑のアナログ・サウンドにとって、とても重要な要素と作者は考えています。

Wurly Premier Gを制作するにあたり、楽器から発するノイズをクリーンにしたり、整理整頓したりといった事はほとんどやっていません。むしろ演奏時に実機と全く同様のノイズを発生するために、バックグラウンドで2つの別々のリリースノイズが同時に作動する機構を入れています。一つは離鍵時のミュートパッドが弦に触れる音、もう一つはハンマーアクション音です。

一見、音楽的に関係の無いような、こういった様々な音が背後でナチュラルに鳴りまくります。注意していないと、何の事か気づかないかもしれません。しかし演奏者は、例え無意識でも、まるで実物を演奏しているかのような、木製鍵盤のウーリッツァーを触っている錯覚に陥ります。もちろん、Wurlitzerと言えばトレモロです。モジュレーションホイールにより、トレモロも自由自在です。リトリガー情報から揺れ始めるタイミング、ウーリッツァー固有の揺れのピッチを、実物ぴったりにシビアに合わせています。

長年に渡りずっとこのWurly Premierは当社の代表作の一つとして活躍してくれました。今後は皆様に恩返ししたいと考え、無償ダウンロード提供致します。甘いWurlitzerサウンドをお楽しみ下さい。

エンジニア＆プロデューサー、ichiro.