もっと詳しく... | 制作エンジニアコラム - ハイレゾである事より重要なこと
その様なバスドラの音色作りや、オフマイク、トップマイクの混ぜ具合、位相管理などは本来エンジニアの専門領域であって、作家さんにとってどうでも良いテクニック、ノウハウを補うのが、我々エンジニアの役割だという想いが常にあります。
ましてや音をアレコレこねくり回さないと正立しない音源など、本末転倒です。実は大量にインサートしているEQ、コンプのほとんどは、不完全な音源の修復のために行っているのです。しかも毎曲。その事に気がついてから、作家に無駄な時間をとらせず、楽曲制作にシンプルに専念して頂ける、素質の良い音源を創る必要性を強く感じて来ました。
Drum Treeはもちろん96kHz/24bitで収録されていますが、ハイレゾである事よりもっと重要なのは、実際の楽曲のミックスダウン、マスタリングのプロセスの中で、「楽器」として本当に望み得る最高の状態であるか?という事です。
複雑なオケの中に混ざった時にも、音楽の土台としての存在感を失わず、例えフェーダーを下げても楽曲の迫力、躍動感、グルーブ感をたっぷり演出してくれる芯のある音。ソロで聴いた時のカッコ良さよりもむしろ、こちらの方が重要である事は、ベテランの方ほど良く知っています。
ただロードすればパーフェクト。後処理不要、最終段まで理想の音質と存在感。それこそが目指すべきバーチャル音源の姿であり、それを実現するのが渾身のサウンド・エンジニアによる音源メーカーたる我々の使命だと信じ、一年半の歳月をかけ一切の妥協なく作っていきました。
例えば、プラグインよりもアナログのアウトボード実機で処理する方が音に優位である事は、他数のエンジニアが証言しています。Drum Treeの技術的ポイントはたくさんありますが、私が最も上質と信じるハードウェア、アウトボードのみを使って贅沢に音作りをしている事も、その一つに上げられます。(本来のスタジオ・レコーディングでは、同時に他の大切な音もたくさん録るので、ドラムにここまで普通は出来ません)
Drum Treeがマスタリング済みというのは、私がユーザーに代わってEQをこねくり回したという意味ではありません。アナログ、デジタル両域において音エネルギーを一滴も漏らさぬ無数の努力の積み重ねが、結果として圧倒的解像度、鮮烈な位相などと表現される最良の「素材」の収穫を実現し、余計な味付けを必要としない、素の素材のままで一番美味しく味わって頂ける音を封じ込めた、という意味でもあります。
20年間、数千曲のミキシング、マスタリングの経験の通じて、その様な夢を実現した市販ドラム音源に私は出会った事がありません。今まで無かった超強力なブッチギリのドラムが欲しい、という想いがDrum Treeを開発した最大の理由です。独自の技術や企業秘密の特殊な録音方法も含め、私の知る限り現代の最高品質を目指し、ありったけの情熱を注いで丁寧に収録しています。
Drum Treeは、経験のあるエンジニア以外は、本当にEQ、コンプを入れずにお使い頂くとマスター段までベストコンディションが得られるはずです。
26ジャンルの典型的なドラムサウンドを収録。さらにスネア41種、シンバル67種、185ピースのバリエーション、8,000サンプルもの膨大なコレクション(17GB)
Drum Treeはジャンル名をクリックするだけです。求める音を瞬時に、直感的に、的確に呼び出す事が出来ます。
もっと詳しく... | 制作エンジニアコラム - なぜ、歴代のメジャーな音を並べたのか
Kick一つにしても、ロックなら厚いギターの壁の中からきちんとビートが聴こえてくる、バスレフの圧、風を感じるようなスピード感が欲しい所ですし、音数の少ないネオソウル、R&B系ならば重低音の効いた、柔らかい音が望ましい。往年のJazzサウンドならばキック単体の迫力より、ドラム全体としてのリアリティ、一体感が伝統的です。
ドラマーのチューニングのさじ加減、叩き方もジャンルによってかなり違います。
音処理の方法は無限ですが、いつの時代も変わらない、多くの人が求める普遍的なドラムサウンドをジャンル分けし、整理していくと、約20種に分類出来る事が分かりました。他のあらゆる派生したイメージにも、ここから近づける事が出来るであろう、ベーシックな音を網羅したつもりです。
近年のデジタル・レコーディング技術は格段に品質向上していると実感しています。2010年にリリースした前回のドラム作品「Drum Premier TAPE」では全てStuderの24chアナログテープに録音しましたが、今回は敢えて一貫して96kHzデジタルで行く予定でした。しかしいくつかのジャンルはどうしてもテープの質感が必要と判断し、それらはテープに録音しました。
Greatest Hitsは多くの人に愛され、後の音楽家の音作りに大きな影響を与えました。そのため各ジャンルの代表として、皆が良く知るメジャーな音を一つ決めて、音作りのリファレンスにしています。しかし過去の音をコピーするのではなく、何をもってその質感、テイストを決定付けているのかを重視し、古いタイトルは汚した音で録るのではなく、テイストを活かしながら現代の最新録音技術でブラッシュアップした、「カッコイイ音」をビシっと録る事を目標としました。
Drum TreeのTreeとは過去、現在、未来を表しています。Drum Treeはドラムの歴史そのものですが、単に過去を模倣するのではなく、歴史的な音楽文化にしっかり根を下ろして、次世代の音を創造していくためのドラム音源です。 そのために音のエディットの自由度を可能な限り高めています。
サステインペダル・Kickオプション
ピアノ・ペダルをキックペダルとして使用可能です。 元ドラマーはちゃんと足でキックを踏めると使いやすい!(ベロシティは100固定)